世田谷パブリックシアター・カフカ2作品交互上演『失踪者』
劇場=三軒茶屋:シアタートラム
評価:★★★★★(Excelent)11/28(夜)・12/1(昼)所見
●原作=フランツ・カフカ 池内紀訳(白水Uブックス「カフカ・コレクション」より/白水社刊)
●構成・演出=松本修
●振付=井手茂太
●美術=伊藤雅子
●照明=大野道乃
●音響=市来邦比古
●衣裳=オルガ・カルピンスキー
●出演=井口千寿瑠、石井ひとみ、伊勢佳世、いせゆみこ、大崎由利子、太田緑ロランス、ともさと衣、西田薫、山田美佳、石母田史朗、泉陽二、笠木誠、粕谷吉洋、小嶋尚樹、斎藤歩、柴田雄平、高田恵篤、中田春介、福士惠二、宮島健
カフカの小説の舞台化に取り組んできた松本修が、今年開場10周年を迎えた世田谷パブリックシアターで、『審判』『失踪者』(旧タイトル『アメリカ』)を交互上演した。
『失踪者』は、過去に『アメリカ』として2回上演されているが、今回は池内紀の翻訳をベースにして再演する。一方の『審判』はこれまでカフカの小説の舞台化に取り組んできた松本が、その最後にとりあげる意欲作だ。3時間以上の大作2本を3週間の間に交互上演するというプロジェクトを実現したスタッフ、キャスト、すべての関係者に、拍手を送りたい。
松本修のカフカ作品舞台化は2001年の『アメリカ』から始まり、2003年にMODE公演として『アメリカ』を再演。2004年に新国立劇場が制作した『城』、この春にはMODE公演で『変身』を取りあげた。今回の『審判』はカフカの長編小説として「孤独の三部作」と呼ばれるシリーズで最後に松本が取り上げるものということ、また『アメリカ』を池内紀訳をベースにして『失踪者』と改題して『審判』と同じスタッフキャストで交互上演することなどで注目された。
『審判』は銀行の支配人であるヨーゼフKが30歳の誕生日に何の理由も告げられぬまま逮捕され、日常生活を送りながらも裁判に出廷したり、弁護士や判事などと交渉するうちに、ちょうど逮捕から1年たった日に突然死刑にされる、という話だ。松本はこの物語を、ストレートに舞台化して成功している。
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