宮城聰、タノニクロウ、ウォーリー木下らが語る「ふじのくに⇔せかい演劇祭2017」

インタビュー

SPACは3月28日にアンティテュセフランス東京で「ふじのくに⇔せかい演劇祭2017」のプレス発表会を行った。

毎年ゴールデンウィークに開催されるSPACの「ふじのくに⇔せかい演劇祭」。今年は「ギリギリ人、襲来!」というキャッチコピーのもと、5カ国から7作品が揃った。注目の宮城聰芸術総監督の演出作品は、静岡音楽館AOIとの共同制作による新作『リヒャルト・シュトラウスの家』と、この夏アヴィニョン演劇祭のオープニングに招聘される『アンティゴネ』再演の2本。また、タニノクロウの最新作『MOON』世界初演も話題を呼びそうだ。

「ふじのくに⇔せかい演劇祭2017」は、4月28日(金) ─ 5月7日(日)、静岡芸術劇場および舞台芸術公園、駿府城公園で上演。
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■今年の演劇祭のテーマ「ギリギリ人、襲来」について
宮城は、今、世界中が自分たちの外側に敵を作ることに興奮する「熱狂の時代」になっているという。そういうときに、優れた芸術家は熱狂に対して醒めた目をもっていて、自分のギリギリな熱狂ぶりを外から見て自ら笑う視点をもっていて、今年の芸術祭にはギリギリな人たちばかりを集めたと語る。

 

■「アンティゴネ」とは
今年の演劇祭のテーマとも繋がる、神の法と人間の法について描いた「アンティゴネ」の物語を、宮城が紹介する。

 

■タニノクロウ、新作『MOON』を語る
最近はヨーロッパでも新作を発表するなど、その独自の世界観が高く評価されているタニノ。今回は2015年にドイツの公共劇場から委嘱を受けて制作した『水の檻』以来、共同制作を行っているプロダクションデザイナーのカスパー・ピヒナーと共に創作する。新作は、観客に宇宙服用のヘルメットを被ってもらい、観客同士が舞台上で共同作業を行うという斬新なものだ。

 

■ドイツ作品 ニコラス・シュテーマン演出『ウェルテル!』
2014年の演劇祭で『ファウスト第一部』を来日上演した演出家ニコラス・シュテーマン。今回は「若きウェルテルの悩み」を現代的に読み替え、ファウスト役を演じたフィリップ・ホーホマイヤーの主演で上演する。宮城曰く「ホーホマイヤーさんは前回は初日の3時間前に来日して、そのまま3時間の芝居を演じた正にギリギリな人」。

 

■シリア作品 オマル・アブーサアダ演出『ダマスカス While I Was Waiting』
シリアの首都ダマスカスに在住する演出家オマル・アブーサアダと、シリアから亡命を余儀なくされた劇作家ムハンマド・アル=アッタール。この2人が実際に起きたシリア政府側による暴行事件をもとに、内戦が続くシリアに生きる人びとの姿を描いた作品。

 

■フランス作品 ジゼル・ヴィエンヌ演出『腹話術師たち、口角泡を飛ばす』
2010年のフェスティバル/トーキョー、また2014年のふじのくに⇔せかい演劇祭でも作品が上演され、衝撃的な内容で話題を集めた演出家ジゼル・ヴィエンヌ。今回はドイツ屈指の人形劇団パペットシアター・ハレとの共同作業で、独自のダークな世界を展開していく。

 

■イタリア作品 ピッポ・デルボーノ演出『六月物語』
1997年に精神病院でワークショップをもとに障碍者、ホームレスの人びとと作品『不労者たち』を上演。以来そのメンバーの多くを自身のカンパニーに劇団員として参加させているピッポ・デルボーノ。彼が自伝的な一人芝居をもって演劇祭で1ステージだけの上演を行う。宮城はその1ステージだけ上演する意味を紹介する。

 

■静岡音楽館AOI+SPAC共同制作 『1940-リヒャルト・シュトラウスの家-』
1940年、太平洋戦争前夜の東京で紀元2000年を祝う祝賀行事が行われたが、その際に奉祝曲を寄せた海外の作曲家の一人がリヒャルト・シュトラウスだった。芸術家と権力との関係性を問う音楽劇を、静岡音楽館との共同制作で宮城が演出する新作。

 

■ウォーリー木下、街頭演劇『ストレンジシード』を語る
昨年から、駿府城公園でのSPACの上演とともに「ふじのくに野外芸術フェスタ」として静岡市の中心街で行われる無料の短編街頭劇のイベント「ストレンジシード」。今年は、森山開次×ひびのこずえ×川瀬浩介、柿喰う客、off-Nibroll、少年王者館、康本雅子+ミウラ1号、FUKAIPRODUCE羽衣ほか、さらにパワーアップしたアーティストが集まる。

 

■質疑応答:タニノクロウ『MOON』の内容について
SPACからのメールで、1ステージあたり観客300名分のヘルメットが到着したというメールを読んで爆笑したというタニノ。作品の内容としてタニノは、日が暮れて暗くなっていくステージ上で、観客が協力して月のエネルギーから明かりを照らしていく、という構成を明かす。

 

■質疑応答:ウォーリー木下『ストレンジシード』出演者について
去年の実績を踏まえて、今年の出演者を選んだ基準についてウォーリーは、「通行人の人が、街頭で行われているパフォーマンスについて、なんだろう、この変な人たちは?」と思って立ち止まれる敷居の低さと、屋外ということに合わせて自分たちの作品を作り替えられるような人たちを選んだ」と語る。

 

■宮城聰、アヴィニョン演劇祭オープニング参加について語る
2014年にアヴィニョン演劇祭に『マハーバーラタ』で参加したSPAC。去年はパリのフランス国立ケ・ブランリー美術館で洞館の開館10周年記念委嘱作品として『イナバとナバホの白兎』を上演したが、その際にアヴィニョン演劇祭のディレクターから、2017年のオープニング公演の下見をしてほしいと言われて、法王庁中庭での公演が決まった、と宮城が今年のアヴィニョン演劇祭オープニング参加の経緯を明かす。

 

■空間構成担当の木津潤平が語るアヴィニョン演劇祭舞台プラン
今回のアヴィニョン公演の空間構成について、担当する木津は「死んだら皆仏」という宮城演出の死生観をいかに反映させるか、また法王庁中庭という特別な空間をどうやって味方につけるか、これがテーマだったと語る。それを元に木津が考えたのは、全面に水を張った舞台と、その上にいくつか置かれた石の上で俳優が演技し、その下から照明を当てて、法王庁の巨大な壁に影を映す、というものだった。

 

■宮城聰、法王庁中庭で公演することについて
2014年にアヴィニョンに初めて招かれて石切場で『マハーバーラタ』を上演したことは、ピーター・ブルックの伝説の舞台と同じ場所で公演するという芸術家としてのゴールが突然叶ってしまったと話す宮城。それに対して今回の法王庁中庭は、フランス人以外では非常に数少ない演出家しかやったことがない場所で、非常に気が重いという。

 

■美加理、『アンティゴネ』アヴィニョン公演の演技を語る
2004年にク・ナウカとしてもギリシャのデルフィの古代競技場と東京国立博物館の野外で上演したことがある『アンティゴネ』だが、そのときとは違い今回は二人一役で演じることになるという美加理。アンティゴネは、ムーバーを美加理、スピーカーを本多真紀が演じる。演技について美加理は、人間を演じるというより彫像のように、素直に策を弄せずずっとそこにいるようにしたい、と話す。

 

■■質疑応答:静岡・駿府城公園での上演について
宮城が静岡公演について、アヴィニョン公演ほどの高さはないが、足場を組んである体の高さの壁を作って、そこに日が暮れていくにしたがってくっきりとした影が映り、最後は盆踊りになって精霊流しのかすかな灯りで終わる、という概要を説明する。

 

■質疑応答:アヴィニョン公演について美加理に
2014年のアヴィニョン公演では、悪天候に見舞われたり、現地のスタッフによるストライキに巻き込まれたりしたが、「今回トラブルへの対応など何か考えているか?」という質問に、美加理は「長年宮城と世界中の色んなところで上演してきて百戦錬磨になっているし、現地でも助けてくれる人が大勢居るので、大丈夫じゃないかな」と笑顔で答えた。


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