新国立劇場は2023/24シーズンの開幕を飾る公演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』の記者会見を8月31日に行った。
『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』はシェイクスピア作品の中では上演も多くはなく、“ダークコメディ”(暗い喜劇)と呼ばれている。また、この2作はシェイクスピアが同時代に執筆されたと推測され、同じテーマを持つ表裏一体のような戯曲だ。さらに、シェイクスピア作品の中では珍しく、女性が物語の主軸となる作品でもある。新国立劇場は2023/2024シーズンのオープニングとして、この2つの作品を交互上演するという日本初の試みに挑む。
この企画を実現するため、12年にわたり新国立劇場でシェイクスピアの歴史劇を上映してきた演出家・鵜山仁をはじめ、シリーズのカンパニーが再び集結。新たなメンバーも加わりさらにパワーアップしたチームが、悲劇とも喜劇とも問題劇とも分類される2作から、まるで現代劇であるかのようなシェイクスピアの鋭い視点を浮かび上がらせるという。
31日の会見には演出の鵜山仁と全出演者19人が参加。出演者は『尺には尺を』でメインの役を演じる者は黒の服装、『終わりよければすべてよし』でメインの役を演じる者は白の衣装と、宣伝用のキービジュアルに揃えた形で登場した。出演者は誰もが2009年の『ヘンリー6世』3部作以降、ほぼ同じスタッフ、キャストで歴史劇を上演してきた“カンパニー”として再びシェイクスピア作品に取り組める喜びを語っていたほか、演出の鵜山が話す内容の難解さについて冗談を言うなど、長年かけて培ってきた信頼関係が垣間見えるアットホームな雰囲気の会見となった。
鵜山 仁(演出)
2作とも、“ベッド・トリック”という変わった仕掛け(ベッドをともにする相手が第三者に入れ替えられる計略)が入っている芝居で、その背景には、人間っていうのは必ず過ちを動かすけど、これを愛が救済できるかという大テーマが控えている。それと同時に、演劇は世界を救済できるかっていう、要するに演じることによってものの見方が変わるとか、感じ方が変わるということも裏テーマとしてあります。それまでの、人間の過ちばっかりじゃなくて、その宇宙のシステムの様々な過ちを浄化できるかという、大命題が控えております。これを14年来一緒にやってきた、また今回新しく入ってくれた仲間たちと、裏から表から重層的にやってみようと……。なんか、わかりました?(笑) 大体、そんなことで、よろしくお願いいたします。
──演出プランについて
中劇場を広くカバーしなければいけないのですが、予算にも限りがあるなかいろんな工夫を今しているところです。これを言っちゃうとおしまいみたいな話なので、言い方が難しいんですけど。えっと、片方はこういう(手で「⎠⎝」という形を作る)たっぷり怪しく包括するというような感じですね。それで、もう片方は(手で「( ̄)」という形を作る)、こっちも怪しくて、厳しくパッキングするという、何を言ってるか全然分からないですけど(笑)。
これ、僕だけが言ってるんじゃなくて、装置家の乘峯君のプランだったり、衣装の前田さんのプランだったりもするんです。どうも私のプランとかっていう考え方がないもんだから、すみません、成り行きでこんなになっちゃいましたみたいな、いつもそういう感じなんで(笑)。何かご質問があれば答えられればと思います。
──なぜ、問題劇と呼ばれるのかという岡本からの質問に
エンディングでハッピーって言っていいのかよく分からない。それで下手をすると何のためにこの芝居やっているのか分からなくなっちゃうから「それ問題だよね」って感じじゃないですかね(笑)。
岡本健一
今回このお話をいただき、まず、2本上演するということにも惹かれましたが、1番惹かれたのは、このカンパニーでもう1回芝居ができるということ。それと『尺には尺を』というタイトルです。自分にとっての尺なのか、時代にとってなのか? それぞれの尺についての話になるんですかね?
それと『終わりよければすべてよし』、これもタイトルに惹かれました。今、いろんな世の中の変化の流れがありますけれど、なんとか「終わりよければすべてよし」で、いい方向に進んでいけばいいなと思います。
それと新国立劇場という国からの依頼ですから、お客さんがみんな納得できるように、演劇の楽しさであったりとかを若い人から年配の方まで、演劇の初心者、初めて見る人たち、みんなに楽しんでいただきたいです。
あとは、この芝居の中でも、色々な権力者が出てきたり市井の人たちが出てきたりするので、いつも言ってるんですけども、日本の政治家の方、国を動かす人たちに劇場に足を運んでもらいたいです。色々な過ちであったりとか、色々な発見であったりとか、何が大切なのか、生きていく上でどういったことが大事なのかっていうことが、いっぱい詰まってる作品になっています。これから本格的な立ち稽古に入るんですけども、みんな、頑張ってます。
──3年ぶりのチーム再結集について
シェイクスピアって誰でももってるイメージっていうのが、ちょっと堅苦しいとか、難しいとかあると思うんです。自分はまず、難しいのはダメなんですよ。それで、まず自分が理解するその数値が、(胸の前に手をかざして)大体この辺なんですよね。その自分に分かるように、みんなすごく丁寧にシェイクスピアの言葉を、日常的に、ほんとに人間的に喋ってくれるし、その技術もみんなもってますし。だから、自分で台本読んでる時は「いつも難しいなこれ」って思うんだけども、ここにいる役者さんたちが声を出して、それを聞くと「あ、こういう話だったんだ」とか、いろんな発見がすごくあるんですよね。
それと鵜山さんの演出にみんな乗ってくるんですけども、14年前、自分は鵜山さんが何言ってるか分からなかったんですけども、最近すごい分かりやすく聞こえるんですよね。それは鵜山さんが変わってきたのか、僕たちが合わせてきたのか、どっちなのか分からないんだけど、共通言語みたいなものをいっぱいっもっているので、これから先すごい楽しみですね。
──これまでの歴史劇との違い
今まではいつも敵対している役で、戦争のシーンがかなりいっぱいあって、渥美博さんの殺陣でものすごい重い剣を使って、劇場中を使って本当に戦ってたんですけれども、今回はそういう場面はなくて。ただ、心理的にというか言葉ですね、戦いじゃない本当に人間的な部分でやり合うみたいなところがあるんですけども、そういった意味で、また新たな感情が今、いっぱい出てきてるような感じですね。
──相手役を務めるソニンの印象
あの、ほんと、こういう感じですね。すごくはっきりしてますし、それでいて妙に色っぽかったりもしますし、子供っぽい部分もあったり。それでやっぱり芯がすごくしっかりしてる、その強さ、そのエネルギーはどこから生まれてきてるのかな、なんて思ったりもします。それで今回自分のやる役は、ものすごく堅ぶつで冷血で本当に冷たい、法律に違反することは全て許さないという堅い人間なんだけれども、ソニンの演じる女性に出会って、自分の価値観が全部崩れて、処女を奪いたいみたいな思いに駆られてしまう。それが、今台本を読んでいるだけでも、信じられるというか、引き込まれるところをいっぱい持ってますね。
浦井健治
この座組に、自分も初めて参加させていただいた時のことを今思い出しておりました。
渡辺徹さんや中嶋しゅうさんや金内喜久夫さんや、たくさんの諸先輩方がこのように並んで、「浦井って誰なの」っていう話で(笑)。僕は本当に公開処刑のようにここに座らせていただいて、何もできず……。本番もそうだったんですけど(笑)。そういう先輩たちの思いとか存在とか価値とか、そういった演劇の血筋を感じながら、この2作同時上映という過酷なトライにまた挑めることを幸せに思いながら、みんなで頑張っていけたらと思っております。
──3年ぶりのチーム再結集について
本読み段階では、2作品同時にやろうっていう試みもあったんですが、それがなくなるぐらい、とにかく皆さん、質問を鵜山さんにして、鵜山さんも各々のキャストに合わせて、そこに降りてきてディスカッションしていて、諦めないなっていう感じがこの座組にはあると思っています。
2作品の舞台がまた今回も紗幕になっているみたいなんですけど、その前に、ぬかるみがあるっていう噂を聞いていて。やっぱり14年経つとぬかるむんだなって(一同爆笑)。でも、ぬかるみって、どんな靴でも、どんな格好でも、這ってでもなんでもいいということで、革靴じゃなくてもいいんだっていう自由をもらえるような気がしていて。なんかそういう風になってってるんだなっていう感覚が、わかりづらいですけど、あります。
──これまでの歴史劇との違い
歴史劇の時って、ヨーク家とランカスター家、赤と白という薔薇に象徴される色分けをされている感じがあって、役割も敵対する方向でした。今回は問題劇だから、大変なことは何にもないし、横文字の名前で混乱することもないし、と思って台本読んでいたんですけど、アドバイスの中で鵜山さんがおっしゃるのが、今までの役柄を通して話していて「佐藤B作さんの演じるフォルスタッフのようなペーローレス」というような比喩で言ってくださって、この座組みでやることに意味があるんだということを稽古場で感じて。演劇ってそういう風に、自分たちがいなくなっても未来に続いていくんだな、と思って。歴史劇だからとか問題劇だからっていう隔てはなくて、シェイクスピアは人間を描いてるんだなと思いながら挑みたいと思いました。
──相手役を務める中嶋の印象
学びの姿勢をずっと崩さずにもちながら、一方で「分かんないな」とか簡単に言ってしまう素敵な方だと思うんですけれども。
今回自分が演じさせていただくバートラムという役が、中嶋さん演じるヘレナという人物に対して、ゲスであまりにも酷いんですが、どんどん本を読んでいくにつれて自分の権力とか、自分のポジションとかにこだわっていたものが「あれ、実はこれ、バートラムよりも強いのはヘレナの方なんだな」っていうのが自分の中で感じてきて。それで最終的に今、合点がいったのが、鵜山さんがダメ出しで「最後の方でバートラムは、塩をかけられたナメクジのようになってくれ」って言われたんです。そういうようなことを感じるぐらいボコボコにされる役と思っております。
中嶋朋子
このカンパニーで『ヘンリー6世』という3部作9時間のお芝居をやって、そこからシェイクスピアの史劇シリーズを始めて、このチームで幸せな時間をずっと過ごしました。そのみんなでできるっていうのは、もう本当にこんな幸せなことはないって思っています。
その『ヘンリー6世』の時に3本一遍にやったので、今回も2本はできるかなって思っちゃったんですよね。でも、『ヘンリー6世』は続きものだったけど、今回は全然違うお話2つで、かなりハードルが高かったと思って、本読みをやりながら、悶絶しております(笑)。
でも、この2本をやるって決定されたことが、私、すごい素敵だなと思って。『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』は、それぞれ単体で読むときよりも、2本いっぺんに読むと見えてくる世界が全然違ってくるんです。うわ、これはマジックだなと思って。それを自分の肉体を使ってお客様に届けることができるっていうのは本当に楽しみで仕方ありません。
──3年ぶりのチーム再結集について
(浦井の「ぬかるみ」についての発言を受けて)こうやってみんな鵜山さん化していくんですよね(笑)。言ってることがわからないんじゃないですか。大丈夫ですか?(笑)。
でも、それこそ14年前にソニンちゃんが、舞台でジャンヌダルク役でフェンシングで戦うんですが、なんか、ほんとに切り込み隊長みたいに「これはどうなんですか。これは私はこう思うんです」って常に切り込む元気なお嬢さんだったわけです。でも、それが、みんながどんどんいろんなものを発見するために自分の意見を言う突破口にもなったなと思ってて。ソニンちゃんとはずっと一緒にいた気分でいたし、ずっと噂はしてたので、久しぶりって逆に言われてびっくりしたっていうか。でも、今回もお稽古場で、鵜山さんと丁々発止(ちょうちょうはっし)でやり合ってるのを見てると、「あー、始まった始まった」と思ってワクワクしております。
──女性が物語の中心になる点について
『終わりよければすべてよし』はシェイクスピア作品の中でも唯一なのかな。女性のセリフでスタートするっていうことで、女性の体感みたいな、生き物として感じることが、道筋として、どちらの作品にもあるのかなとかは思います。シェイクスピア作品は、どういうイメージを持たれてるかわからないですけど、人間臭いっていう点はやっぱり素敵なところですし、今回もそれはもう、人間味がプンプンしてるっていう、生き物としての人間っていうことを、私はすごく感じながら、やらせていただいてる気がします。
──相手役を務める浦井の印象
もう大好きな役者さんなので劇中で「大好き」って大ぴらに言えるって最高だと思ってます。
浦井くんって急に化けるからとっても楽しくって、王子様だな、キラキラしてるなっていう部分と、それこそゲスいなっていう色が出てきたりとか、毎回ちょっと驚くんですよね。三の線もあったりして、何が飛び出てくるかわからないのがとっても楽しくて。長い付き合いなので、その信頼関係の中で、本当に自由にいろんなものを投げ合っても喜んでお芝居ができるチームでもあるので、とても幸せに感じています。いつもは格好いいので、今回は違った彼の魅力を堪能しています。
ソニン
私は今回、鵜山さん演出のこのカンパニーに戻ってこれたことが、ほんとにほんとに嬉しさで胸いっぱい、もうそんな気持ちで、最初お話をいただいた時に2つ返事でお受けしました。
この2作品は、男女の愛を中心にしている物語で、そして女性が大活躍する話で、そして問題劇と言われている2作品ですけども、読めば読むほどシェイクスピアの描く女性は難しい、ひと筋縄ではいかないなと悶々としている日々です。本当にシェイクスピアならではの、何重にも重なっている比喩だったり皮肉だったりを、魅力的にリアリティをもって2役とも演じられていけるように、これからお稽古に励んでいきたいと思います。
──久しぶりのチームカムバックについて
なんか恥ずかしいですね。14年経って、私、成長してないみたいじゃないですか(笑)。結構大人になったつもりなんですけど。
14年前の『ヘンリー6世』以来、このカンパニーはそれ以来なんですけど、あの時、私が感じたのは、体の中をもうお芝居で埋め尽くされてる、この濃度の高い人たちの中に囲まれているのが、本当に楽しくて。うわ、こんなに芝居漬けで、こんなに芝居を愛する人たちに囲まれて、なんて現場なんだって思って。朝の11時開演から夜の10時までずっと劇場にいるっていうことが、もう幸せで幸せでたまらなかったことを記憶してます。
今回もやっぱり本読みの段階から皆さんの芝居のレベルが異次元すぎて。本来だったらこう、周りがうますぎるとちょっと萎縮したりするんですけど、それがなく、こんな贅沢な現場に入れるっていう幸せで体じゅうが喜んでいます。そして、鵜山さんの難解な言葉を今回は1発で理解してやるぞっていう気持ちで、ウーンってフル回転で頭を働かせて、帰ったらもう疲れてベッドに倒れ込むみたいな日々で。なんでこんなに眠いんだろう、というほど疲れきっている毎日が本当に幸せで。あ、14年ぶりに戻ってこれて本当に幸せだなっていうのを毎日感じています。
──女性が物語の中心になる点について──相手役を務める岡本の印象
岡本さんは年を重ねてもいつも色気ムンムンだなと思いまして。前作の『ヘンリー6世』の時も私は岡本さんに口説かれる役で、色恋の関係性になるっていうのには、もう何の心配もないなっていう風に最初から思っていました。
今回は、私が本当に自覚なく魅了しちゃうっていうところがあって、どういうふうに魅力をこの岡本さん演じるアンジェラの前で出せばいいんだろうっていうのは、今試行錯誤していて、私も岡本さんもアプローチを毎回変えていらしてくださるので、いろんな可能性があるんだなと思って。最初本読んだ時に、このシーンを2人でどう作ればどういう風になるんだろうって、もうワクワクが止まらなくて。で、本読みの段階でも岡本さんの声を聞きながらやってるのが本当に楽しくて。私はあそこが一番の見どころだなと思ってます。
立川三貴
久しぶりのシェイクスピア作品なんです。ですから、ちょっと緊張しておりますが、やっぱりシェイクスピアは豊かな世界観があって、喜怒哀楽の高低が素晴らしくて、本当に永遠の名作だなと感じるんですね。2本とも素晴らしい世界観だと思うんです。
ただ、このカンパニーの初演から何が変わったかっていうと、私自身はだいぶ年取っちゃったなと(笑)。これに追いついていくのが大変だということを、今、実感しております。一生懸命稽古をして、なんとか若い俳優の皆さんに迷惑かけないように頑張っていきたいと思うので、どうぞよろしくお願いします。
吉村 直
『ヘンリー6世』からもう14年経って、いやすごいなと思って、また、この一座に参加できてることを、本当に嬉しく思います。
歴史劇だけで終わるのかなと思っていたら、「次これやるよ」って言われてとっても嬉しかったですね。やっぱりこの一座でね、この見知ったメンバーでお芝居に取り組むっていうのは、僕のもうホームグランドみたいな感じになってますんで、今回の2作品がどういう展開になっていくか、これからどんどん稽古やって、色々変わっていくんじゃないかって思います。自分自身も、みんなから鼓舞されて、今までにない自分と出会えたらいいなと思ってるんですけども、いかんせんキャパシティーが小さいもんですから、そう簡単にはいかないとは思うんですけど、でも、非常に、楽しみです。
舞台監督の北条さんは「この一座は、もう劇団ですからね、みんな大事にしていきましょう」って言われて、そうだなって本当に思いますし、これからみんなで一緒にこの舞台を練り上げていけたらと思います。
木下浩之
この座組は、2009年の『ヘンリー6世』以来14年間、スタッフ、キャスト、ほぼ同じメンバーで公演してきたわけですが、このメンバー、僕は芝居作りにはとてもいいメンバーじゃないかなと思っています。大体1年か2年おきごとに集まって公演しているわけですが、劇団公演みたいにベッタリでもなく、1公演ずつのプロデュース公演みたいなよそよそしさもなく、強いて言えば、14年続いた遠距離恋愛の相手と久しぶりに再会するような、胸のときめきを感じさせてくれるメンバーだと思っています(一同笑い)。
この公演は、ずっと続けて見に来ていただいてるお客様、シェイクスピア好きのお客様の中にも、同じような気持ちの方も大勢いらっしゃると思います。ですから、今回も久しぶりに再会する相手がどう変わったのか、どう変わってないのか。そのあたりも楽しみに見に来ていただけたらいいなと思っています。
那須佐代子
私は、その2009年から始まったこの新国立劇場でのシェイクスピアシリーズに全作品参加させていただいて、皆勤賞メンバーのうちの1人です。ですから、歴史劇シリーズが前回『リチャード二世』で終わるということをすごく寂しく思っていたので、こういう形で再開されるという話を聞いて、非常に嬉しく喜んで参加させていただいております。
今、稽古が本読みから立ち稽古に入ろうかという段階なんですけれども、この作品が、歴史劇シリーズと違って問題劇と言われるだけあって、なかなか悲劇とも喜劇ともつかない、解釈によって、また座組みによっては非常にいろんな形で演じられて、お客様に与えるメッセージがすごい違う作品だなと思うんです。そこを、鵜山さんがこのシーンをどう考えているか、この役はどういうつもりで今このセリフを喋ってるかということを、巧みなウィットに富んだ説明で稽古を進めてくださっています。私はその鵜山さんの解釈が非常に面白いと思っていて「きっとこの作品、面白くなるな」と確信みたいなものを感じております。
勝部演之
思えば、2009年に『ヘンリー6世』で始まったこのシリーズが、今年で14年。当時71歳であった私は85歳になりました。この老齢のもう使い物にならないような役者を呼んでいただいて、大変、感謝しております。できましたら、一座の皆さんの足を引っ張らないように千秋楽まで頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
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