ティーファクトリー「毛皮のマリー」
劇場=三軒茶屋:シアタートラム
5/1(木)ー 4(日)
評価:★★★★(Very Good)5/2(夜)所見
●作=寺山修司
●企画・監修=森崎偏陸
●衣裳・美粧=宇野亜喜良
●演出=川村毅
●出演=川村毅、手塚とおる、菅野菜保之、笠木誠、中村崇、伊澤勉、村島智之、森耕平、森山光治良、椎谷陽一、村井雄、岡大輔、関洋甫
川村毅が久々に自身の公演で主演し、はじけた演技を見せてくれた。
毛皮のマリーといえば、美輪明宏の定番である。他には篠井英介が演じたくらいで、ようするに女形が演じるオカマの男娼役というイメージが定着している。しかし、川村は演出家として戯曲を冷静に読み込んで、マリーのせりふには自身を美しいと語っているが、ト書きにはひと言も美貌だとは書かれていないと気づき、あえて中年のオカマの醜さを隠さずに演じた。今回の公演の成功はここにある。
川村版マリーは、ときおりその存在が美しく見えるが、その裏に常に醜さがぴったりと寄り添っている。それは川村だけでなく、手塚とおるの欣也も、菅野菜保之の少女も同じだ。美少年の面影を残しつつ中年になりかけた手塚、愛らしい衣裳と可愛い声音で語るが四角い顔に中年太りの体つきの管野。ここに出てくるものは皆、美醜が常に一体となっている。この物語がバロック的な過剰な美しさと醜さでできた世界だということを明晰に示しているのだ。
川村はもちろん自らを美しいとは思っていない。そこがこれまでマリーを演じてきた女形と決定的に違うところである。つまり、川村はマリーを演じるときに、女形としての自分の美しさを出そうという欲をもっていないのである。その意味で虚心に戯曲と向き合うことが出来るという点で川村は適任だといえよう。
一般的には美しさとはかけ離れた川村が、美貌の美輪が演じてきたマリーに挑戦するということで話題を集めた公演だが、その怪物的な川村版マリーの存在こそが、寺山の描きたかった『毛皮のマリー』だったのではないだろうか。
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